地域の全てを凝縮したBioSAKE
その存在価値と可能性を考えてみました
日本酒の更なる価値は”物語
”全ての人に日本酒を美味しく飲んでもらいたい”
多様な日本酒の味わいや楽しみ方が急激な勢いで広がる今、誰もが「この味が好き」と思える日本酒に必ず出会える時代になりました。
もはや“美味しい“は前提となり、これからの日本酒にはその先の価値が求められることになります。では、その先の価値とは何なのか。私は“物語”だと考えています。
そのひとつの“物語”としてBioSAKEは大きな力を持っています。なぜなら「BioSAKEを醸す=その地域のテロワールを表現する」に直結するからです。
BioSAKEという概念を考えるにあたり要となるのが「水、米、田、人」。単にその土地の有機米を使うだけではBioSAKEとはなり得ません。まず日本酒の成分の80%は水ですので、醸造にあたっては使用する米の総量以上に大量の良質な“水“が必要となります。そして有機米を育てる土壌と農家、酒を醸す蔵人、これらが一体になることで初めてBioSAKEは完成します。
その意味で、BioSAKEはその地域の全てを凝縮した存在と言えるのです。つまり、この“各地方のテロワールを純粋に凝縮・表現する物語“こそBioSAKEが日本酒業界に与える価値と可能性なのではないでしょうか。
そしてそれは同時に、「日本の自然=水、木々や野山、田畑を守り、日本の産業=酒蔵、有機米を育てる農家を守る」という地域をトータルで守る循環へと繋がっていくものと考えています。
有機米の力強さ、味わい深さは酒質に反映される
従来オーガニックの日本酒は「美味しくない、渋い、硬い」など言われていましたが、近年の醸造技術の発達によって有機米で醸した日本酒は間違いなく美味しくなっています。
先日とあるイベントの打合せで有機米を使用した生酒をお燗にした際に、うっかり放置して70℃を超える温度まで上がってしまい「さすがに味のバランス崩れてしまったかな」と不安になったのですが、しっかりと持ち堪えただけでなく“炊きたてのご飯のようにほくほくと美味しい味わい”になっておりシェフと共に感動したことがありました。
全てのBioSAKEがこうなるとは言いませんが、微発泡の新酒でここまでのパワーを持てるのは素材そのものの強さがあってこそだと言えるのではないでしょうか(他の日本酒で同様の実験をしたところ、見事に味が崩れてしまいました)。
そんな地域と自然の味が生きるBioSAKEを、まずは多くの人に飲んでいただきたいと思っています。そのために私は味と文化と物語を融合させてBioSAKEを表現し、伝えていきたいと考えています。
味の多様性、飲み方の多様性が受け入れられるようになった今、日本酒の世界は新しいフェーズに入り始めています。昔の日本酒に対しての価値観や概念は一度捨てていただき、フラットな軽い気持ちで是非日本酒を楽しんでいただけましたら本当に嬉しく思います。
「私は日本酒が苦手だ」と思い込むのは、まだ早い!
〜日本酒に愛を、酒飲みに幸せを〜
※2018年4月30日発行 ORGANIC VISION VOL.10掲載記事を一部加筆修正して載せております。