お酒の知識

【今更聞けない!】生酒と火入れ酒の話

さてさて今回の話題は「生酒」!日本酒の「生」ってなんだろう?を解消します。

なんとなくフレッシュそう、なんとなく良さそう、なんとなく美味しそう

そんなボヤッとしたイメージをクリアにしてしまいましょう!

 

 

『生』ってつく日本酒色々ありますよね?


仕事終わりや汗をかいた後に、「生ビール」をグイッとやってプハーッとなるのがお好きな方も多いと思います。勿論、スパークリングワインや発泡性の日本酒でグイッといくのが好きな方も大勢いるかと。

 

なんでこんな話から入ったかと言うと、日本酒の「生」も生ビールの「生」と意味が同じだからです。

つまり、『生酒=非加熱(火入れしていない)の日本酒』です。

 

「非加熱だから何なの?」と言いますと、こんな要素があります。

  • 日本酒の中の酵素が失活していない
  • 独特のフレッシュな香味がある

 

どういうことかと言いますと、酵素などの影響を受けやすく日に日に変化します。

それこそ1週間で別物かと思うくらい味が変わることもあります。

 

それを止めるためには、酵素や微生物たちの活動を抑制できる氷温で保管する、もしくは酵素の活動を止める65℃以上に加熱するかのいずれかが必須となりますが、中々個人で瓶を氷温保存したり火入れしたりする設備を持っている人も少ないと思いますので、生酒は「早めに飲みきってください」と言われている次第です。

 

イメージとしては生鮮食品かなと。冷蔵庫の保管が最低ライン、常温で置いておこうものならどんどん変化もしくは劣化します。それだけ味のバランスが動きやす日本酒ではあるのですが、同時にそれが魅力だったりします。

 

ちなみに、日本酒には生と名のつくタイプが3種類「生酒」「生詰」「生貯蔵」とありますが、火入れをしていないのは「生酒」1種類だけです。それ以外の「生詰」「生貯蔵」は火入れしてます!

 

「何だよそれ…」と思われた方、僕と仲間です。最初意味が分かりませんでした。勉強して覚えたのですが、正直に言えばそこまで無理に覚えなくても大丈夫です!

 

前提として、今まで日本酒は「基本的に2回火入れをしていた」とだけ頭の片隅に置いておいておけば十分です。

 

 

<生酒>

・一度も火入れをしないで出荷

・非常に変化しやすい

・華やかでフレッシュ、ガス感のあるのが多い

 

<生詰>

・搾ってすぐに1回火入れして貯蔵、そのまま瓶詰して出荷

・生酒よりは変化しにくいがまだ不安定

・搾りたての頃のフレッシュ感も結構残る

・秋に出る「ひやおろし」は春に搾った生詰を秋まで寝かせた日本酒

 

<生貯蔵>

・搾ってそのまま貯蔵して、瓶詰めの時に1回火入れをして出荷

・生詰よりも後半に火入れをするのでより安定する

・生酒で保管しているのでフレッシュさよりも落ち着いた印象になる

 

ところで「火入れ」って何なの?茹でるの?火にかけるの?となりますよね。

 

火入れって何するの?


https://www.nanbubijin.co.jp/kodawari/hiire/

 

日本酒は酵素の活動を止め、雑菌汚染を避けるために「火入れ=加熱殺菌処理」をおこないます。なので基本的に「生」の記載がなければ全て火入れをしています。

 

さて、その火入れの大きな役割は日本酒の時間を止めることです。

 

まずは日本酒を美味しく醸してくれた微生物や酵素たちの活動を止めてもらうために熱を加えて不活性化します。そうすることで過剰な発酵を抑え、杜氏さんが美味しいと思う状態にドンピシャで止めることができます。

 

そして日本酒を劣化させる火落ち菌などの悪影響を及ぼす菌たちを殺菌することで美味しい状態を長く保てるようにしています。

 

これら2つ「時間の停止」「殺菌」が火入れをする大きな意義です。

 

ここでふと疑問が湧きます。何で2回も火入れするんだろう?

ひとことで言うなら、“品質をしっかり安定させるため”です。

 

昭和の後期まで、日本酒のほとんどはタンク貯蔵でした。そのためまずは酵素を失活させて安定状態で保管するために1回火入れをします。そして、出荷の際にタンクから日本酒を瓶詰めしていくのですが、昔は今ほど衛生環境に恵まれていなかったこともあり外気に触れた際に火落ち菌などの雑菌を拾うリスクが大きく、瓶詰め時にも火入れをすることが一般的でした。

 

今もその流れで2回が定番となっていると言われていますが、現代においては技術も発達し、清潔な蔵内には火落ち菌などはほとんどいません。ある醸造家さんの言葉を借りるなら、「火落ち菌などがいる様な劣悪な衛生現場は、吟醸酒という分野を造るには値しません。だから日本酒屋の心がける事は、1に清掃、2に清掃です」とある通り現場の衛生環境は大きく改善されていると考えて良いかもしれません。

 

また、瓶貯蔵や瓶燗火入れの手法が一般的になり、殺菌後も密閉状態を維持できるようになったことから、1回の火入れで万全な状態に仕上げる蔵元さんも出てきています。瓶貯蔵をしている日本酒はもはや1回火入れが基本であり、もはやそれをあえて記載しないとする蔵も実はあるのです。

 

いずれにせよ、大事なことは世に出る日本酒が「美味しい状態でお客様の元に届くかどうか」です。杜氏さんが「コレだ!」と思った味を消費者が「コレか!」と飲めたら素敵ですね。

 

それで結局味はどう違うの?


ここまで生酒や火入れ酒とを簡単に解説してきましたが、飲む側からしたら大事なのは「で、味はどう違うの?どういう良さがあるの?」ですよね。最後はそこをいくつかのポイントにまとめたいと思います。

 

<生酒>

・基本的にはフレッシュさや華やかさが売り

・氷温下で適切に熟成された生酒の芳醇な味わいは絶品

・生のフルーツのようなみずみずしい甘みがある

☆お店で購入時は温度管理を必ずチェック!

 

<火入れ酒>

・生っぽい甘さが控えられキレが出る

・瓶燗火入れの場合、生酒のようなガス感やフレッシュさが残りやすい

・バランスの良い完成した日本酒の印象になりやすい

☆味の幅が広いので、選びきれない場合はお店の方の力を存分に借りてください!

 

※「生詰」「生貯蔵」は生酒と火入れ酒の中間をイメージしてもらえれば大体大丈夫です。

 

おまけ

生酒も火入れ酒も、どちらのお燗も美味しいです。生酒をつけるなんて勿体無いと言う方もいますが、火入れ酒とは違った美味しさが楽しめるのでぜひお試しを!

 

〜日本酒に愛を、酒飲みに幸せを〜

Kosuke Takayanagi

Kosuke Takayanagi

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〜日本酒愛の伝道師〜
日本酒を通じて人の縁を繋ぎ、文化や地域に貢献すべく活動中。
こちらは日本酒に関する全般の情報発信プラットフォームです。
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「テイスティング=分析+映像化」の手法で投稿しています!
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・国際唎酒師 / International Kikisakeshi
・JSA認定 SAKE DIPLOMA

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