日本酒紹介

【酒蔵取材】新政酒造

秋田県の新政酒造様へインタビューに伺わせていただきました。

インタビュアーは並里です。日本酒の世界にかける熱い想いをご覧ください。

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新政酒造 佐藤様:A

並里:N

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《インタビュースタート》

A:え、もう映ってるの?

N:はい、始まってます!本日はお忙しい中、インタビューを受けてくださりありがとうございました。

A:いえとんでもないです。むしろ遠いところまでありがとうございます。

N:今回インタビューをさせていただきます並里と申します。どうぞよろしくお願い致します。では早速ですが、佐藤さん、自己紹介と新政酒造さんの紹介、可能であればビジョンやミッションなども伺えればと思うのですがよろしいでしょうか。

A:新政酒造株式会社の佐藤祐輔と申します。私のところは1852年に創業してますので、歴史としては170年くらいですかね。いま私が8代目となっており、7代目だった父は現在会長をやっています。2012年から社長をやっていまして、そうか、もう8年くらいやっているのか。。いや、7年か。

N:造りはもうちょっと前から入られていたんですよね?

A:うん、私は2007年の暮れ、ほぼ2008年に蔵に入ったんですよ。そこからやってるからもう10年、11年になりましたね。

N:大胆な改革もされてましたね。

A:やらざるを得なかったんですよ。逆に、景気が良かったらやっていなかったと思います。

N:確かに。当時蔵の景気が良かったら、今の新政は生まれていなかったのかもしれないですね。

A:そうですね。

《Q:新政酒造のビジョンやミッション、今後どうしていきたいか》

A:実はあんまりビジョンやミッションていうものはないんですよね。単純にこの仕事をする前からオーガニックなものやピュアなものが好きだったので、全部純米で、生酛系で、自社田で、無農薬で、とかいずれなろうって考えていました。

N:最初からそこを考えていたんですね。

A:うん10年くらい前からですね。その時はまだ木桶を知らなかったんですよ。木桶のことは後から知ったので。そういう意味ではあんまり抽象的なことってなくて、一刻も早くそっちにするぞという思いでやってきたんです。けどそれって一気にはできないじゃないですか。だから毎年コツコツやっている感じですね。今年は全部純米酒にしましたとか、今年は秋田県産米だけにしましたとか、今年から契約栽培だけですとか、まあそういうことをコツコツと。

N:見ている方からすると「あ!また何か新しいことを!」というように感じて、毎年毎年チャレンジされていてすごいなあと。

A:まあねえ、やることも多いし。まず一個クリアしたいところっていうので積み重ねてきましたよ。

N:なるほど、そしてそれはイメージとして決まっていたと。

A:うん、そう。あ、会社スローガンみたいなのもあるんですよ一応。「伝統文化を再創造する」っていう。

N:まさに今やっていることがそれですよね!

A:だからそれは酒造りだけじゃないんですよね。木桶とか米作りも入っている。だから伝統文化を、となっていくんですよね。

N:それは最初から酒造り以外にも広げようという考えがあったのでしょうか?

A:うん、広がるとは思ってましたよね。結局のところ、昔とは何もかも変わってしまったから、酒造りだけ戻したとしても、例えばお米はどうなの?となるわけですね。

N:そうですよね。それは何となくそうなるだろうなと予想はしていたのですか?

A:予想をしてたというか、そうせざるを得ないんだろうなとは感じていました。もともと農業は日本酒の業界に入る前から、物書きとしてジャーナリストをやっていた頃に取材をする対象だったので、このままだと農業こそまずいなと思っていた。だからそちらの方こそ変えていかないと、日本酒も米の出来を超えることはできないので。だから体制が整ったら米も早めにやらないとなと思っていました。まあ既定路線ですよね。

<研究員達からの質問コーナー>

N:ここからは、こうしてチャレンジングな取り組みをしている新政酒造さんに対して、このライブ配信を視聴しているSAKENOMIRAI研究所の皆さんからも是非聞いてみたい事があるということで事前に質問をもらってきました。そちらにお答えいただいてもよろしいでしょうか。

A:はい、どうぞ。

<Q:佐藤さんはSNSなどでエゴサーチすることはありますか?>

N:佐藤さんも世間からどう見られているのか、どのようなコメントが上がっているのかなど調べることはあるんでしょうか?

A:あー、いや、実は見ないんですよ。自分が取材された記事とかも見ないんですよ。なんか嫌な感じなので。これ仙禽の薄井くんとも言ってたんだけど「お前もかー!」みたいな。見られないよね、恥ずかしくて(笑)一切見ないですね。

N:なんか仙禽の薄井さんとはチャレンジの方向も似ている印象ですよね。

A:そうね、それに彼はソムリエということもあってそっちの視点も強いですよね。

N:一緒にイベントに出たり、交流も多そうなイメージですが。

A:そうそう、インフィニットとかだよね。うん、まあ話は合うよね。

N:例えばお二人はどのような関係性ですか?ライバル?

A:ライバルっていうような感じはないんですよね。それは全国のどの酒蔵さんに対しても。

N:他の酒蔵のここを意識しているっていうのも特にないですか?

A:うん、だって比べようがなくないですか?伝統的に日本酒を造ってはいるけれど、現在の市場の中にあって全然他人から影響を受けることもないし、もともとやりたいことも決まっているので。自社田無農薬で伝統的な技法を駆使して、かつ自分が素直に美味しいと思える日本酒を造るということをやっているから、他の誰かがこう言ってるからという理由で取り入れたりしようがないんですよね。だってやりたい事が決まってるから。

N:新政酒造さんが独自路線を進んでいるなというのは挑戦されていることを見ても、お酒の味わいの方向を見ても感じるところですね。だからこうご自身の思うことという事で、他の人の意見は気にしていないという事なんですね。

A:うん、言っても聞かないしねえ(笑)。

N:そうですよね。周りから「酸っぱすぎる」とか言われてもそれを変えるわけにもいかないですしね。

A:うん。まあね、我々作り手が楽しく、そして腕を磨かないといけなくて、確かに70%とか60%の力で消費者の方に喜んでいただける日本酒とか提供できますし、むしろ手慣れたこととか分かりきってる手法を徹底的にやったほうがクォリティが上がることも勿論重々分かっていて、「2012、3年のやまユみたいな味を造って」と言われたら造れるけど、そこ造ってどうするのかなって思うんですよ。それに比べると、全体的に今の方がマニアックになってるし、よりトライする事が多いので品質もブレるんだけど、ただこうなんだろう、明らかに今の方が腕自体は上がっているんですよ。けどその腕のギリギリのところでやってるから酒質はブレるんだけど、それがないと完全に自分の腕の縮小再生産になってしまうんで、チャレンジしていかないとって思うんですよね。そうでないと、やっぱり単なるブランドになるよね。昔神秘的なことやってビッグになって、生産量増やさずに続けていれば経営は成り立つかもしれないけど、全然日本酒の文化に貢献してないですよね。いま取り組んでいることって、日本酒の文化を陰ながら支えるってことだから、そういう意味では自分のところの経営だけで物事はできないし、単純に食っていくだけだったら、今このレシピですごいウケたから、安定的に造るために機械でも入れたらいいんですよ。だって、人は少なければ少ないほど簡単に回るじゃないですか。

N:確かにそうですね。

A:でも、僕の性格上そういう方向にはいかなかったんですよね。まあ人が増えると現場の運営はより困難になりますけどね。あと、酒質もブレるわけですよ。でも、やっぱりやりがいがあるんですよね。「わぁ、すげえな」全然こんなこと10年も酒造りしてたのに、こんな基本的なことも分からなかったんだと。

N:今でもそういう発見があるんですね。

A:伝統技法をやるということはそういうことなんですよ。 なんでそういうことをやっていたんだろうみたいなのがやっと今分かったとか、ずっと毎年毎年いっぱい発見があって、それを積み重ねていくことで本物の造り手になると思うんですよね。

N:そうですよね。何かこうビジョンとしてこういうお酒を造りたいというものが最初にあると仰っていたと思うのですが、例えば全部自社田など全てやりたい事が叶ったとき、その先を行こうとは考えているのでしょうか?

A:今の理想が叶ったらか。それはわからないなあ。どうなんでしょうね、やっていくうちに木の桶が必要になって、そうしたら今度は木桶を作ってくれる人がいなくなっちゃうから少なくとも自分のところで21本ていうかなりの量の木桶を自分たちでメンテナンスしなきゃいけないし、今後は秋田杉でも作りたいたいと思ってるから自社で木桶をやりたいなという思いも出てきたりするので、もう何年か続けて最終目標に近づいらたやりたいことは出てくるとは思うんですけどね。

N:チャレンジを続ける中で何か見つかるかもしれないということですね。

A:うん、そのはずだと思う。あと飽きっぽいのもありますからね。

N:だからこそ新しいチャレンジができるというのもありますよね。それでは次の質問です。

<Q:No.6の胸ポケットのデザインが変更されたそうですが、どう変わったのでしょうか?>

A:おー!そうそう。見ます?どう変わったか。

N:ありますか今?

A:なんか毎年変えてるんですよ。胸のポイントはね毎年変わってんですね。

N:お、これが2018で、これが去年ですね。

A:これ初めの2、3ヶ月は年号のロゴの周辺がハスの花になったバージョンだったんだよね。

N:あ、それをまた変えたんですね!

A:なんか、仏ぽいっていうか水っぽいでしょ。けど今の完成品ができる前に実は商品として出ちゃってたんですよね。

N:本来であれば毎年変えていくところを、今年は年の途中で変えてしまったんですね。

A:うん、気に入らなくて変えちゃった。

N:そういう時もあるんですね。納得いかなくてっていう。

A:うん、あるある。こちょこちょ気になったらすぐデザイン屋に行って、やっぱりこれ変えね?とか。陽の鳥も今年から11年目だから、去年10周年記念だったんで、ちょっとデザイン変えたんですけどデザイン間に合わなくて、そしたら結果的に最初のやつは昔のままなんだけど2、3ロット目からニューバージョンの陽の鳥になってたりします。

N:毎年デザインを変えていくっていうのも何かあるんですか?

A:え、だって、変えたくなるでしょ(笑)?

N:ボトルのラベルって変えない蔵が結構多いじゃないですか。

A:まあでもNo.6の「6」のデザインは変えていないんだよね。ただやっぱりビンテージは変わるわけだから。

N:そこのビンテージが書いてある部分のデザインを変えていくんですよね。けどデザイン変更って大変じゃないですか?デザイナーにお願いしてデザインしてとなると。

A:それはね、社内にデザイナーいるし。隣の席でデザイン作ってるから。

N:なるほど。それなら途中で変えようって時にもやりやすいですね。

A:うん、だからデザインの仕事だけでも膨大にあります。ちなみに彼は資材の出荷とか発注の全体を見てくれていて、彼に任せておけば全部完璧にやってくれるんで安心なんですよ。

N:あ、ここで新しい質問が来てます。

<Q:デザインは佐藤さんが考えるのですか?>

A:それは、僕の方からモチーフを持ってくるものと、任せるよとしている2タイプがあります。例えば、今年は鏡みたいなやつでいきましょうとなるとまず僕がモチーフとか持ってきてそれで作ってもらう。そこから今度こういうバリエーション作ってってなった時に、周りに雲を散らしたり火を散らしたりっていうのは彼らがやってくれる感じです。

N:バリエーションを増やして任せる時に、こういう味や香りにするからこういうデザインにしてくれみたいな指示はあるんですか?

A:モチーフ自体は僕が決めるから、それ以降のバリエーションは任せているんだよね。

<Q:デザインを考える時に大切にしていることはありますか>

A:いわゆる宗教的なモチーフとかユニバーサルデザイン的なものが多いかな。自分でも何でか分からないけどギャラティックなものとか。

N:ジャケットの背中とかバンダナとかそんな感じですもんね。

A:宗教的な衣装ってどこの民族を見ても共感するところがある。そういうところが結局自然ていうものの表現に繋がったりする。人と自然の融合みたいな。とりわけ老若男女誰が見ての馴染みやすい意匠を目指してはいるよね。

N:新政のラベルデザインはあんまりでかでかと漢字二文字ってないですよね。数字の6とかマークとかですよね。あえてそうしてるんですか?

A:そう、中身を伝統的なものにしてるからギャップとしての意味もあるし、パッと分かるじゃない「亜麻猫」って覚えなくても「ネコのやつ」、天蛙なら「カエルのやつ」とか。

N:陽乃鳥は貴醸酒のコンセプトとぴったりだと思いました。繰り返し新しい命が生まれるっていう感じで。

A:そうそう、酒が再生するというようなところが、イメージ通りだよね。・

<Q:音楽やビート文学への造詣が深いようですが、酒造りにリンクしているところはありますか?>

A:そうですね。カウンターカルチャーなんだけど、そういうのって伝統文化と親和性が高い。アメリカのインディアンとか、ビートルズとかもそうだよね。過度に行き過ぎた人間のライフスタイルをちょっと見直そうよみたいなものがある。それは今この会社のやっていることと密接に関係がある。だから僕らは今伝統的なことやってるけど、もしそれが普通じゃないように見えるとしたら伝統文化ってものが如何にないがしろにされているかという証左でもある。

N:確かにそうですよね。伝統的であるあまりに逆に新鮮に見えてしまう。

A:江戸時代だったら普通にやっていたものが、現代になると何故こんなに技術運用が困難になったのか。こんなに難しいのかとひしひし感じている。遠いものになってしまったんだなあと。アメリカだったらインディアンみたいな伝統もあったけど、そんな伝統はほぼなくなっている。そういうものを大事にしていこうというものはカウンターカルチャーから学んだ。僕はそれを大事にしている。

N:新政酒造さんでは日本酒造りを伝統の製法に戻してきていますよね。原点回帰をしている部分があって。ただ、味わいを見ると全く古い感じがしない。生酛だとしても一般的な古臭い味がない、それは何か意識をしたのでしょうか。どう意識したら伝統的でありながらも古臭くない味わいを出せたのでしょうか。

A:僕は「伝統の味わい=最先端の味わい」だと思う。生酛なんて醸造学的なことを言うと、酵母純度といって酵母がどれくらい純粋に酒母の中で増えているのかという指標があるんですけど、1位が生酛ですからね。そして2位が高温糖化型の速醸です。一般的な速醸って実は野生酵母が入っちゃうから不純なんですよ。そういうことってあんまり知られてなくて、何よりみんな絶対勘違いしてるのは、日本酒の作り方が進化しているっていうめちゃくちゃな勘違いをしているんです。実は強烈に退化しているんですよ。実は何も進んでないかな。要するに、蓋麹でできるクォリティを他のやり方にして下げてしまったり、何とか再現しようとして機械を使ったりしているんですが、そこが大きな間違いなんです。だからつまり、完璧な生酛を造れば一番綺麗な酒になりますよ。ただしそのやり方が昔で失われてしまって、また今の時代も完璧なものを求めなくなってしまった。山廃・生酛って名前だけで売ろうとするなら、正直年に3、4本造っているくらいだったら生酛のことなんて分からないから、そう言うレベルの境地まで行けないでしょうね。

N:ピュアな生酛に行くためには衛生環境も大切ですよね。

A:そこ一番大事ですよ。まあそれ以前にも試行錯誤がたくさんありますよ。何本もお酒腐らせたり、なんでこうなったらこんな匂い出るのか、なんでこうなったら酒がダメになるのか、とか何本もやってね。僕ら今ちゃんと生酛やってるって言っても毎日アルコール分を測って、酸や糖分や温度を測ってってやってるんですけど、昔の人は完璧な生酛を単に匂いを嗅いだり触ったりするだけで造っちゃうんだから人間じゃねえって思いますよね。まあだから、人間が退化してるんでしょうね。

N:機械に頼ってしまうということなんでしょうかね。ただ、その方が再現性はあるかもしれませんよ?

A::分からないよ、江戸時代の人の方が再現性高かったかもよ?悲しいかな、同じ人間だったけど、退化したんだろうな。昔の人は体がガッシリしてたじゃないですか。それが肉体的な快活さとかそういうものも今の我々から失われているかもしれない。酒造りの楽しさだってそうです。会社に行ってですよ、ピッてボタンを押すだけのような酒造りじゃつまらないでしょ。誰のために機械化して安定的に造るの?お客さんのためとかいうけど大量に作りすぎて飽きられてスーパーに並んで結局売れずに返品されてみたいになっちゃったわけでしょ。何のための技術進化だったのかさっぱり分かんないですよね。だからもしクォリティをいくらコストかけてでも追求するんだったら伝統製法に戻す方がいいと確信してますね。いくら金も人手もかかっていいのならですが。これからはそういう時代じゃないですかね。

N:そこが課題にもなりますね。

A:今後の酒造りのね。

N:皆さんクォリティを求めているのは確かなんですよね。

A:そう、そこで勘違いしているのは、近代的な技術を使った方が過去より進んでいて、今の技術や機械を使う方がいい酒を作れると思ってしまっているところですね。僕も最初はそう思っていたんだけど、やってみると、それは大きな間違いで現代技術や機械って伝統技術の簡易版でしかないんですよ。

<Q:次にチャレンジしたいことがあれば教えてください!>

A:具体的に僕としてはゆくゆくは自社田無農薬、現段階では地域の方でもいいのかなと思うけど。あと直近だと木桶を12本買う。木桶作ってくれる人が来年で終わりなんですよ。

N:社内の職人というのは考えてますか?

A:まだそこまではいかないかな。なかなかそこまでは難しいんですよね。コツコツやってますけどね。今まで木桶に関しては毎年4本ぐらいずつ買ってたんだけど、来年で終わってしまうと聞いて、マズイ3年分くらい買おう!って思ってさ。そしたら入る場所なくて、今からどう捻出するかとか、もうとりあえず一旦12本が限界かなと。

N:木桶を作れる方が2020で引退されてしまうんですね。そういえば大手蔵の中には自社で木桶を作っているところありますよね。

A:ウンウン、剣菱さんやってるよね。うちのも作ってくれるんだったらいいんだけどね。

N:作るのも難しいと思いますが、管理も相当難しいのでは?

A:慣れると大したことないですよ。琺瑯タンクが簡単すぎるだけ。

N:生酛に有用な菌が住み付きやすく、発酵しやすいというメリットがあると思いますが、悪さをする菌が住み着いたりしたら大変じゃないですか?

A:もちろん悪い菌もいっぱいいますよ。でもそういう菌が増えないようにしているわけよ。生酛をやるっていうのはそういうことで、そういう菌が増えるとしたら多分麹で増えてるわけでしょ。そういう悪い菌が増えたら生酛ができないから、だからそういう意味ではもっと前段階で防いでいて、生酛で入る有用菌は我々は結果的に増やしているわけだから、それが結果的に木桶に移っていきます。

N:有用な菌を増やして他の菌を圧倒するっていうことですね。

A:そうそう。だから伝統技法は単一でやっても効果が薄いんですよ。全部戻さないと意味がない。純米であって、生酛であって、木桶であることに価値がある。そこに無農薬米が入るとより純化される。余計な窒素がないから余計な雑菌はより入りにくくなる。無農薬栽培米の方が、直接衛生とは関係ないと言われるかもしれないけど、より微生物層もやりやすい、生酛がやりやすいんだよね。よろしくない窒素まみれの大量に肥料ぶち込まれたような米って生酛の出来も悪いし失敗することも多いんですよ。なんでなんだろうね。何というか、そういう環境で生まれ育ってきた酒なんですよね、生酛は。

N:クォリティを向上させる上でも無農薬であることは大事ということですね

A:単純に僕ピュアなものが好きだから無農薬がいいなくらいにイメージで思っていたんだけど、現実、他の蔵が作る無農薬米の日本酒を飲んで、なんかね違うんですよね何かが。言い表しづらいような味があって、単純に言うとね、60%くらいの磨きなのに40%くらいの磨きの綺麗な味。確か仁井田本家さんとか50%くらいの精米歩合で金賞とったりしてるよね。無農薬米使って精米歩合50%くらいで金賞獲ってるところ他にもあったかなと。そう、最低でも10%か20%増しの綺麗さになると思うんだよね。ただ、単にコストでいうならその話でいうと無農薬米は価格が通常米の2倍くらいするんですが、それだけじゃなくて味が違うんですよ根本的に。これはもう利き酒用語では言えない。うちらも自分たちで無農薬米を作ってみて、思い入れとかではなく明らかに「違うもの」があるんですよ。味の面でも、単なるイメージではなく、作り手として飲み手として一つ図抜けたところがある。それでよりやりたくなって、自分達で田んぼをやり初めてました。で、やってみたら農薬を使わないためにものすごい大変なんですよ。秋田みたいな寒い地域は農薬使わないって大変で、稲熱病みたいな最悪な病気が蔓延しやすいんです。そうならないためには肥料をあげちゃダメなんですよ。肥料をあげない本当の地力でもって、土の中にいる、今まで除草剤とかで殺していた微生物とかを全部活躍させていきます。入れるものっていったら稲刈りした後の稲わらを戻すくらいだし、あとは落ちてくる落ち葉くらい。それを実現するためには土の中に微生物がたくさんいないといけないんですよ。微生物を育てるために、代掻きっていって初めに空気を入れ込んで好気性にして、そのあと水を張って嫌気性にしてっていう発酵現象をやっているんです。あんまり深くすると今度は嫌気状態になりすぎてガスが出て根が死ぬからダメなんですよ。ぶっちゃけ酒造りより大変なんですよ。なんたって大地を発酵させないといけないので。今は僕の部下がやっているんだけど、すごいなと思います。酒造りの前に壮絶な発酵をしないとできない、それを見てると今度は味だけじゃなくて発酵屋として胸が騒ぐんですよね。

N:それは面白いですね。好気性から嫌気性に切り替えるタイミングも難しいですよね。

A:そういうことを昔の人は勝手にやってたんですよね。細かく。それが今では簡単に終わりみたいなね。こうして無農薬とかやっているとね、如何に今の農業がおかしかったのかが分かるんですよ、田んぼとか昔から見てたけど、今って田んぼにバッタとかいないし、トンボもあんまりいないんですよ。蛍もいないじゃないですか。40~50年前なんてどこも蛍まみれでしたよ。だからね、今本当にヤバいことが起こってるんだなって田んぼにいるとヒシヒシと分かる。最近の田んぼを見ると完全な穀物工場に見えるんですよ。人すらいない。人いないっておかしくない?人いなくてもできるって何?だから70、80歳のおじいちゃんでもできるんですよね。もうそんなもの値段下がって当然でしょ。田んぼ中にいつも誰かいて、一日中草毟りしてる人見たことある?田園風景見てみんな「綺麗ですね」とかいうけど、僕から言わせたら死の光景ですよね、全然美しくねえよこんな田園て思うよね。自分でやってみてですよ。

N:確かにそう言われると今の田園風景って異常かもしれないですね。

A:無農薬をやる時って、何かしらやらないといけないんですよ。田んぼに入って土踏んで微生物を活性化させてとかね。雑草もあんまり取りすぎなくていいんだけどね。稲より低ければ多少あってもいいし。光合成を妨げなければいい。余計な窒素を吸ってくれたりするし、実は畔にある何の変哲もない雑草が虫を寄せ付けない効果があったりしてと、何でもかんでも取ればいいものではない。だから如何に今の農業がおかしいかが分かる。酒造りも同じ。これをやっているのとやっていないのでは酒造りへの向き合い方も変わる。だから伝統文化を再創造するってなったんだけど、そういう意味でお酒造りだけをやっていればいいわけではなくて、より深い境地に達するためにはそういうこともしないといけない。

N:伝統や自然が如何に優れているかというのがよく分かりますね。

A:このままいくとヤバいんじゃないのと思ってしまう。逆にこんなにたくさん米を作れるようにして何か意味あるの?みたいな。米がこんなに値段下がっているのに、今でもたくさん収穫する研究してるわけですよ。農業機器いっぱい作って。なんもかんも全部いらなかったんじゃないのと思う時があって。全く江戸時代のままでいいとは思わなくて、むしろここまで進んで自分の首を締めてますよね。日本酒の遍歴を見てもそうだし、仕込みの遍歴を見てもそうだったし。もうちょい手前で止まってたらきっといいのに、加速しちゃってるからね。よりたくさん採ろう、よりたくさん雑草や昆虫殺そうみたいなね。いやもうほとんどいねえから、もっと殺すのかよ、みたいな。

N:無農薬でやっていると虫も帰ってくるんですかね。

A:確実に戻りますよね。うちの無農薬田が去年成功したんですけど、ちらほら蛍が出てきましたからね。やっぱり昔たくさんいたから、うちが自社田持ってる集落なんて昔は昔蛍だらけでしたよ。

A:その光景を見れば、畑の正しいあり方が見えてきそうですね。

イナゴがいて蜘蛛がいてっていうのが普通なんですよ。虫とかもね、イナゴが出たら蜘蛛が食べてとかね、そういうメカニズムがあるんですよ。なのに今の農業はそれを丸ごとご破算にしちゃってるんですよね。だからそういうものを丸ごと復活させて、その中から出てくる米で酒造りをすることで、酒造りそのものに関しても伝統産業としてより深い視点を得られんじゃないかと思っているんですよね。

N:それは確実にそうですよね。蛍までいる田んぼって今本当に珍しいですよね。

A:昔はたくさんいあったんですよ。だってずっと水流してたし。

<Q:佐藤さんが考える、次に来る日本酒のトレンド>

A:ちっちゃいトレンドとかそういう意味では、白麹なのかな?dancyuでも特集してたし。

亜麻猫もそう、今年10周年になりまして記念酒を発売することになりました。

N:白麹の面白いのは全く違うアプローチで作れるっていうところですよね。乳酸添加しなくていいし。

A:それは白麹酒母やってる場合だね。白麹酒母みんなやればいいのにね。仁井田本家さんは「穏」ってブランドでは白麹酒母やられてるもんね。醸造用乳酸使わないから。まあそういう使い方していこうっていうのが亜麻猫の本来のスタート時の思想だったんですよ。単に酸味の味付けとかだけだったらすぐに廃れちゃうと思いますよ、バカ臭いですもんそんなもの。

N:白麹はある種キャラクターのある酸が出てきますよね。

A:あるけど、日本酒は醸造用乳酸とか酒造法で制限かかってるわけじゃないからね。単に酸っぱい酒造りたかったら、「安全醸造のために必要なんです!」とか言ってだーって入れたらいいんだよね。やらないで欲しいけどさ。だから単に酸っぱい酒を作るために白麹使うっていうのは、手間暇かかるだけだから、そういうやり方じゃなくて、醸造用乳酸を使わないピュアな日本酒を醸すためにっていうところからスタートとしないと白麹の文化は根付かないよね。そこは少し懸念してるかな。

N:麹について白麹以外では何か工夫しているものはありますか?

A:うちはたまに生米麹作りますよ。濡れた生米の状態にリゾープスっていうクモノスカビを使っているかな。

N:日本酒には普通使わないですよね?

A:今は使わないけど、過去は使われてた。日本酒の源流、っていうとあれだけど、辿ってみると紹興酒でしょ。そうするとクモノスカビなんだよね。アスペルギルスオリゼーの方が強烈に強いから日本では作るのが大変だったみたいだね。

N:それは破精込んではいかないんですか?

A:なんかね、破精込んでるのか破精込んでないのか全くわかんないんだよね。

N:これは商品化されるんですか?

A:次の頒布会にまた入りますよ。以前は3年前くらいの頒布会に入れてたかな。

<Q:低精白の日本酒に取り組んでいる理由>

もともといくつも理由があるんだけど、米を磨けば美味しくなるっていう考え方がもともと好きではなかったんですよ。綺麗にはなるけど、元々の原料のタンパク質が少なければ甘みが増えても綺麗だったりもするし、何よりイベントとかに行って純米大吟醸くださいという人たくさんいるでしょ。その人は明らかにヒエラルキー的に大吟醸が良いと思ってるんですよね。けど、実際にはそうでもなかったりする。純米大吟醸より純米吟醸が美味しい蔵なんて山ほどあるし、大抵の場合そうだし。過度に磨けば美味しいかといえばそんなことはない。残念なことに良い酒は精米歩合と直結しているというようなことを特定名称酒が言ってしまっているんですよね。それが良くないんですよね。まあ間違いがないのかもしれないけど。ただ、一歩踏み込んでいくと、やっぱり磨きが良い=美味しいっていうのは長い目で見るとお客様にすごく誤解を与える。吟醸の規格が精米歩合60%以下で、大吟醸なら50%以下でしょ。吟醸の意味は本来は吟味して醸すって意味じゃないですか。精米歩合と関係ないよね。

N:そうですね、その意味で大事なのは精米よりも発酵の部分ですからね。

A:我々は個々の酒蔵のいろんな地域風土を背負ってそこのところをポリシーや技術で戦っていて、やっぱりそこのところに焦点を当てて欲しいのに、精米歩合のところだけに焦点が当たってしまうっていうのが問題だと思っていて、要はね、精米歩合ってのは、精米っていうのは人間がやってるんじゃなくて機械がやってるんですよ。

N:確かにそうですね

A:米入れたらもうプログラムがあるから、ボタンをビーって押したら勝手に動いてある重さになったら勝手に出てきて、それを取るだけなんですよ。それでしかも大体みんな自分ではやってないんですよ。それを日本酒を選ぶ最大のポイントにしちゃっていんですか?機械がやってるんですよね見たいな。そこに人間の技術ほとんど介在してないっす。しかもみんな大体同じくらいに削ってるっすよみたいな。僕はそれが嫌いで、だから僕の蔵の酒には吟醸とは書いていないですね。純米としか書かない。純米とも書かなくていいとは思うけど、そこは一応ね、純米くらいは残そうかなと。

N:そこはポリシーでもありますもんね。アルコール添加無しというようなところも。少し話を低精白に戻すと、精米歩合96%でお酒をクォリティ高く作るってことは難しいのですか?

A:初めは自分達の技術のために、よし玄い米で美味い酒造ってやろうじゃないかと。そのためには原料の米も良いもの作ってもらわなければならないし、技術習得もしないとだし、原料米の種類の選択とかね、そういった色々なものが揃わないと美味しいものはできないから、技術的にももっと上手くなるために玄い米でやろうとなったんですよね。

N:余計な香りや味わいがどうしても出てきやすいと思うんですが、80%を超えると油っぽい感じ等を如何に抑えてるんですか?

A:それは抑えるのと、生かすのと2つをやらないとけないですね。単に抑えてばっかりいたら磨いた米のお酒とコンセプトが一緒になっちゃうんですよ。僕が思ってるのはね、磨いた米っていうのはワインでいうなら白ワインみたいな感じなんですよね。もちろん白ワインで素晴らしいものもあるけど、白ワインは綺麗なものを目指して作るわけですよ、ハッキリ言えば。それが白ワインの世界では行き過ぎてしまって、綺麗になり過ぎたんで今度はしっかり樽に入れたりとかして、ひとつカッチリした形を取り戻していったんですよね。どうしても削っていく、綺麗にしていくっていう方向に行くんだよね、うまいものを作ろうとすると。吟醸とか磨くお酒ってそっちの方なんだけど、この方向っていずれ行き詰まっちゃうわけ、味として。

N:どんどんシンプルになっていってしまいますよね。

A:そうシンプルになりすぎてしまって各々の個性が無くなっていったり、芸術的なこういう深い感動に至らすような表現力とかっていうものも一定のところまで行くと詰まってしまう。それと比べると、玄い米はね、だって白より赤の方がまあ評価高いでしょ。表現はよくないけど、実際のところで何百万の値段で取引されるのってほとんど赤でしょ。けど味で言えば、赤ワインて白ワインに渋みが入っただけって言えるわけですよ。日本酒の世界ももうちょっとそういうところ見直したらどうかと。苦いとか渋いっていうのを全部弾いちゃってるわけでしょ。

N:オーク樽や木桶をやるのもそう言う意味合いがあるんでしょうか?

A:そう、心地よい複雑性をもたらしたい。だから玄い米も、ものすごく玄いやつに死に物狂いで吟醸の技巧をぶつけたらちょうどいいものできるんじゃないみたいな勝手な予想でやってったらだんだん玄くなっていったんだよね。80%、85%では綺麗になり過ぎて、吟醸の風味が強過ぎてもうやる必要ないとなって、90%、92%、94%となっていったんだよね。技術も上がるし、そこで綺麗な磨いた吟醸にはないような凄まじいパワーを秘めた濃くて軽い新しいジャンルができるんじゃないかなと。

N:麹の部分に秘密があるのかなとか思っていたんですが。新政のお酒はアミノ酸度が低いじゃないですか。あのレベルの低さって他の蔵ではあまり見ないかなと。

A:まあアルコール度数が低いからね。どこの蔵もアルコール14度くらいで絞ったらアミノ酸度0.7とかになるんじゃない?皆んな大体アミノ酸度0.9とか0.8をアルコール16.5度とかで達成してるんだけど、14.8度くらいの時に経過簿を見るとまだ0、6くらいしか出てないと思うんだ。そこで搾ってるだけなんだけどね。だからそこは単純に低アルコールで搾っているだけ。けど今は逆にアルコール14度とか13度で搾るためにアミノ酸0.8欲しいんですよ。こちらとしては低すぎるのが厄介なんだよね。それでかなり変えてみたら、そしたら今度はアミノ酸度1.2とか1.3の酒が続出してこれうちの味じゃねえ、みたいなものが出たんですよ。これ格下げしようかなとも思ったんだけど味バランスが良かったから使うことにしました。

N:それってどのお酒なんですか?

A:結構最近搾られたエクリュやNo.6のRとか。何かいつもと若干味違うなと思うんだけど、ご了承いただけると。それでまあ仕込んでいたらそれが良い感じに戻ってきて、格下げしようかと思ったけどなかなか面白い味だったので出しても悪くないかなと。今季のスタートがアミノ酸度0、6だったのにいきなり1.2になるっていうね。けど、味バランスはとってるので、これが0.8くらいまで今戻ってきたのかな、それでやっと今ぐらいに蓋麹もマスターしたし、当初の目的を達成して、やっと今年まとまりつつあるなと。

<Q:今後特約店との付き合い方や小売店に販売を任せるにあたって求めることは?>

A:特約店さんに関しては満足しています。最近は自分で酒販免許取って地酒やろうみたいな人増えてるじゃないですか。僕が酒好きになった15年前くらいには信じられないですよ。みんな焼酎飲んでて日本酒は罰ゲームでしたよ。昔だったら日本酒の店やりたいとか自殺行為ですよね。今はそういうことにチャンスを見出してる人も多いし、応援したいと思っています。新しい人がチャレンジする酒屋は応援したいですね。

N:人気の酒蔵は今お付き合いがある小売店などで手一杯なので新規はお断りしているというところも多い中で、新政酒造さんがどう新規を受け入れていくのか教えてください。

A:蔵も理想の売り方がみんな違うからそのニーズを組んだ酒屋がくっつけばいいと思う。もっとコツコツ売って欲しい、もっと派手に売って欲しい、みんなニーズが違うと思う。ある程度量を売って欲しい、量は売らなくていいからこだわりを伝えて売って欲しい、とか色々あるよね。

N:新政酒造さんが特約店に対して求めているものは何でしょうか?

A:やっぱりね、特約店さんも家業としてやって消え去るところが多いんですよね。そうすると保守的になりがちで、新しいトライができないところが多い。けどそれが潰れる原因なんですよ。結局ね、自分たち家族だけが食っていければいいと思いがちなんですよ。けど違うでしょ。僕らは日本酒文化に寄生して食わしてもらってるんだから、日本酒文化に恩返ししないと食い扶持なくなっちゃうじゃないですか。だからやっぱりそのためにはもっと勉強しなきゃいけないし、食べ物についても考えないといけないんですよ。僕に言わせると酒販店さんのやることなんて膨大にあるんですよね。かつそういうことをやって、いかに日本酒文化を広めるかというところをやっていただきたいですよね。家族でやっているとお金は入ってくるじゃないですか。利益を自分らに分配して贅沢ができるんですよね。これが人雇ってもう1店舗と考えると途端にリスクが出てくるんですよね。けどそういうことをどんどんやらないと。だってその辺歩いている人、どこで美味しい酒買えるとか知らないでしょ。知ってもらうためにはどうするかを考えて挑戦しないとダメなんですよ。儲けを自分らの給料にしていい車とか買うのに使ってたら次が続かないし業界が成長しない。もっと日本酒業界をよくするために考えて行動して欲しい。

N:業界全体の未来を考えることが大事ですよね。

<Q:佐藤さんが考えるSAKE NO MIRAI についてお伺いしたいです>

A:うーん、やっていることが全てだけど、僕らは日本酒っていう込み入った世界でやってきたんですよ。それが今ちょっとずつ知名度が上がってきて、今すごく本質的なところが問われていると思うんですよね。伝統産業と言われているけど製法はちゃんとなってるのか、国際的な目からチェックされる時代になっている。日本酒はあらゆる発酵食品の中でも正直究極なんだよね。単純に言うと、発酵食っていうのは酵母で発酵したもの、カビで発酵したもの、乳酸菌で発酵したもの、この3つがありますよね。酵母で発酵したもの、これはワイン。カビで発酵したものはチーズや納豆、乳酸菌で発酵したのがヨーグルト。そこで生酛純米酒に限っていうならこの3つ全てを満たしているんですよ。これ全てを満たしている食べ物ってほとんどないんですよ。これはやっぱり究極であって、そういう意味で日本酒っていうものが1500年前からコツコツブラッシュアップされてて、科学もなかった時代にほぼ完璧な醸造技術が用意されている。こういう素晴らしい日本の宝を罰ゲームの酒として扱っていたんですよ。僕自身もそう思ってたくらいだし。僕もカラオケとか行って、じゃんけんで負けたら日本酒一気とかね、やりましたよ。本当に酷い話ですよ。本当はハレの日の酒だったのにね。日本酒のこの正当な位置を取り戻す、それでこそ国際的な目にも耐えられる、というか国際的な目で見ても脅威を与えられる魅力になるのかなと思って全部生酛だったり木桶だったりをやってるんですよね。僕のやり方自体は他のお蔵さんが真似する必要もないし、江戸時代にやっていたことをそっくり持ってきているだけのことなんだけどね。僕のこの言い方に対して賛否はあるかと思うけど、単に純米大吟醸を造れば売れていた時代は終わって、どんな造りなの?どんな米なの?誰が作ったの?を強く問われる時代になった。お蔵さんも酒販店さんも自分の狭い世界じゃなくて、酸度がどうだとか、グルコースがどうとか、金賞獲ったとかそんなレベルではなく、より世界中の人を驚嘆させられるよなものを提供しないといけない。僕はそういう思いで酒造りをしている。

N:魅力があっても知られていない、そういう日本酒が多いと思います。今後それを如何に表に出して行くかも課題になりそうですね。

<Q:SAKENOMIRAI研究所のメンバーにメッセージをお願い致します>

A:いつもご愛好ありがとうございます。そうですよね、うーん、でも、日本酒っていうのは人の人生変えちゃうようなパワーがあるので、僕も磯自慢飲んで人生変わったんですよね。だから日本酒っていうものを、本質的な魅力を汚さないようにやってきたつもりです。これからもっともっと日本酒は美味しくなるし、より文化的にも洗練されたものになるので、今日本酒を支えてくれている方が胸を張って日本酒と共に人生を歩めるように一蔵元として頑張りたいと思っています。これからも日本酒にお付き合いいただけますと幸いです。

2019年3月23日 新政酒造にて

佐藤祐輔様、この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!

〜data〜

会社概要
名 称  新政酒造株式会社
代表者  代表取締役会長 佐藤卯兵衛
代表取締役社長 佐藤祐輔
所在地  〒010-0921 秋田県秋田市大町6丁目2番35号
事業内容 日本酒の醸造および販売
創 業  嘉永五年(1852年)
TEL  018-823-6407
FAX  018-864-4407
広 報  info@aramasa.jp

Kosuke Takayanagi

Kosuke Takayanagi

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〜日本酒愛の伝道師〜
日本酒を通じて人の縁を繋ぎ、文化や地域に貢献すべく活動中。
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